解析してみよう
シエンタのハイマウントストップランプ編
2024/10
2024/10
1ヶ月ほど前に「ナガレンタイマーSS」がようやく完成しました。シグナルスタート機能付きのジムカーナ用タイム測定器です。
完成までのテストではリアクションタイムが正しく測定されないなどの問題がありましたが、プログラム修正を経て完成となりました。あさひプライムスキー場で開催されている長野練で使ってもらえるのは嬉しい限りです。
しかしまだ課題もあります。その1つはシグナルが暗く見にくいことです。原因はLEDの電力が小さいこととレンズカットでしょうか。レンズカットについては光を拡散するものに交換したところ若干改善しましたが、そもそももっとLEDの電力を増やす必要がありそうです。
そんなことをXでつぶやいていたところ、ジムカーナ仲間から廃自動車部品を譲ってもらえることになりました。故障や破損で交換したハイマウントストップランプなどです。そのまま使うのは難しいかもしれませんが、分解して解析すれば得られるものがあるはず。ありがたく頂戴したのでした。
シグナル部分。
あいにく点灯中の写真はありませんが、暗くて見にくい。曇りの日なら良いもののピーカンはツライ。
頂戴してきた自動車用廃部品。
見たことがあるような部品です。この写真だけで装着されていた車種が分かる人はエライ。
譲り受けたいくつか部品のうち、今回はトヨタ シエンタのハイマウントストップランプを分解してみます。なんでも点かなくなってしまうことが多いらしく、度々交換車両が入庫するとかで2個ありました。Webでも検索してみたところ修理や交換の情報がたくさんヒット。信頼性の高いはずのトヨタなのに残念。
シエンタのハイマウントストップランプ。
1個は既に殻を割ってあります。接着(溶着?)されていたのでプラスティックカッターで彫りこんで割りました。裏面の表示によると定格は12V2.6W。
取り出したLEDユニット。
高視野角の角型LEDが6個搭載されています。回路としては2個並列が3直列。LEDは基板ではなく板金にカシメ固定されています。板金が放熱器と配線を兼ねる構造のようです。
ユニット裏側の抵抗とダイオード。
抵抗は30オーム。定格は1W位でしょうか。LEDと同じく並列で15オームの合成抵抗を構成しています。ダイオードは整流用で一般的な1N4007でした。逆電圧がかかった場合のLED破損防止と推測。
点灯テスト。
さすがにハイマウントストップランプ用だけあって明るいです。消費電流を測定してみたところ0.22A。電力は2.64Wとなり概ね表示通りでした。
基板パターンなどから起こした回路図。
1個のLEDに約110mAが流れます。一般的なLEDの20mAと比較すると5倍超。やはりこれくらいの電流を流さないと十分な明るさは得られません。
板金から取り外したLEDの裏側。
一般的な角型LEDと比較してアノード、カソードの電極が非常に大型です。110mAの電流を流すには十分な放熱が不可欠なので、板金部に熱を逃がすための構造でしょう。
まとめ。やはり視認性を確保するにはLEDに十分なエネルギー、すなわち電流を流さないといけません。しかし点灯の瞬間はスピーカーも駆動していますがその電力が小さくなく、LEDの電流を増やせるかどうか。検討しましょう。
ここからはおまけ。どうしてこのシエンタのハイマウントストップランプは点かなくなってしまうのか? 上の写真では点灯していますがユニットに触れると点いたり点かなかったり。どこかが接触不良を起こしているようです。
半田付け部のクラック。
2ヵ所ともにクラックが入っていました。半田付けしなおしたところ点かない症状は出なくなりました。ここが接触不良、不点灯の原因です。
点灯、消灯の度にLEDが取り付けられた板金は熱で伸縮し、半田付け部にストレスが繰り返し加わることでクラックが発生したと推測します。振動や鉛フリー半田の影響もありそうです。いずれにしても頻発していることからから設計が適切でなかったと言わざるをえませんね。