CSE アイソレーションレギュレター
RX-100twin修理(3台目)
2021/12

 3台目の修理記録です。

 故障の症状としては2系統ある出力の1系統の出力が出ないとのことでした。

お預かりしたレギュレター。

 まずは外観や背面のヒューズ、端子台の点検をしましたが問題はありません。次に電源を入れてスイッチや表示LEDの動作を点検しましたが常でした。

出力電圧のチェック。

 約100V。上側コンセントの系統は正常です。試しに出力周波数設定を50から120Hzまで変更してみましたが全てで正常でした。

下側コンセントの出力電圧点検。

 4Vほどしかなく異常です。出力周波数設定を変えてみましたが変化はありません。内部の確認に移ります。

カバー取り外し後。

 まずは内部をライト片手に目視で徹底的に点検します。しかし異状は確認できませんでした。

 次にリード線を軽く引っ張ったり、部品に力を加えてみたりしましたが、出力に変化はありません。単純な接触不良が原因ではないようです。

 故障箇所の絞り込み。

 この機器は出力が2系統あります。正常な上側コンセントと故障している下側コンセントの2系統で、各系統の出力へ至る部品構成は同じです。そこで2系統あるパワートランジスタが実装されている基板への接続を入れ換えてみました。入れ換えで故障系統が逆になれば、パワートランジスタ実装基板に問題があることになります。コネクターを入れ換えてテストしました。

 結果としては変化はありませんでした。つまりパワートランジスタ実装基板には問題がないことになります。どこか他の場所に問題があるはずです。

電源・コントロール基板の取り出し。

 こちらも取り外し後にまずは目視点検しましたが、目立った異状はありません。部品の経年変化による若干の変色はありましたが、故障原因とは思えませんでした。ここでもリード線や部品に力を加えてみましたが出力に変化はありません。

2系統分ある基板。

 パワートラジスタ実装基板の入れ換えテストと同様に入れ換えてテストしてみます。元の位置が分からなくならないように左右表示を貼り付けています。

 取り外した2系統の基板。

 この基板はハンダ付けされているので、吸い取り線でハンダを吸い取って取り外しました。

 目視点検では異状はありません。ハンダのクラックなどを疑ってルーペで拡大観察してみても異状はありませんでした。

 基板入れ換え後の出力電圧点検。

 故障していた下側に正常な電圧が出力されるようになりました。ということは逆に上側の出力は異常になったかと思いきや、

上側の出力電圧点検。

 上側の出力も正常!

 不思議です。基板入れ換えで下側が正常になったのであれば、上側は異常になるはずです。しかし上下共に正常になってしまいました。

 この後もう一度入れ換え作業を行って元の位置に基板を戻したのですが、上下共に出力電圧は正常のままでした。

 考えられる理由としては、基板入れ換え時にハンダを溶かして脱着をしたことで微小なハンダクラックが解消されてしまったのかもしれません。実際に上下コンセントに機器をつないで電力を供給させてみましたが、正常です。


 直った、と言いたいところです。しかし原因がはっきりせずに正常な状態に戻った場合は要注意です。再び何かの拍子に故障が再発するかもしれません。今一度各部の点検としばらくの使用テストを行います。

取り外したリレー。

 機器が届いた時は下側の出力が出ませんでした。その後点検をし、基板を入れ換えたりしているうちに下側の出力が正常にされるようになったわけです。

 各部の点検をしても疑わしい場所はありませんでした。そこで疑ったのはリレーの接点です。元々は接触不良を起こしていたが、入り切りを繰り返す内に摩擦や微小な火花でセルフクリーニングされて接触が回復したのではないかと。

カバーを外して接点を引き抜いたリレー。

 本来は非分解ですが確認のために分解しています。接点を観察してみます。

可動接点。

 中央の接触部がすすけています。やはりここが接触不良を起こしていたのが故障の原因のようです。

クリーニング後。

 2000番のペーパーで磨きました。中央部にはごくわずかに凹みが残っていますが問題ないでしょう。磨く作業は削る作業に他なりません。あまり磨いてしまうと寸法的に小さくなり、それはそれで接触不良を招きかねないのでほどほどにしておきます。

 ここでは接点を磨くことで機能を回復させていますが、本来はリレーを新品交換するべきです。しかしこのリレー、2006年に受注終了となっていて現在では入手できません。どこかに在庫はあるかもしれませんが入手できるか分かりません。それにたとえ未使用であっても長期在庫品は接点が酸化劣化しているかもしれません。

 電気的に同じ他社製リレーへの交換も考えましたが、ピンの配置寸法が異なります。基板を改造すれば取り付けられるかもしれませんが、それは大掛かり過ぎなので接点を磨いて回復させることにしました。

固定接点。

 こちらも同様に磨きました。

導通確認。

 コイルに24Vを加え動作させて接点の抵抗を測定します。テスターの表示は0.3オームですが、これはテスターの内部抵抗なので実質はほぼゼロです。問題ありません。

基板に追加したバイパス配線。

 このリレー、基板に無理やり挿入されて取り付けられていました。なぜかリレーのピン間隔と基板の穴間隔が一致していないのです。隣接する電解コンデンサーとも干渉していました。そのため取り外しが困難で、基板のスルーホールを傷めてしまいました。

 スルーホールは極小の銅箔板を追加して補修しましたが、念を入れてバイパス配線をしておきました。

組立て。

 今一度各部を点検、清掃しながら組み立てます。

出力に負荷をかけてのテスト。

 出力定格一杯の100Wの白熱電球を上下コンセントに接続してテストします。電源を入り切りしたり出力周波数を変えたりしながらしばらくテストしましたが問題ありません。以下は出力測定結果です。(室温約20℃、1時間エージング後)。

  50Hz設定時 49.99Hz 上99.3V 下99.5V

  60Hz設定時 60.04Hz 上99.7V 下99.9V

 80Hz設定時 80.07Hz 上100.2V 下100.3V

 100Hz設定時 99.99Hz 上100.7V 下100.8V

 120Hz設定時 120.0Hz 上101.5V 下101.5V

カバーの取り付け。

 最後に今一度内部を確認してからカバーを取り付けて作業完了です。念の為この後にも動作確認をしばらくしてからオーナーに返送しました。

 返送後、オーナーの元でも正常動作を確認できたとのこと。原因究明で少し手間取ってしまいましたが、お役に立ててヨカッタ、ヨカッタ。