点かなくなったLEDバルブを分解して調べてみた

2022/9

 「メーターに組み込んでいたLEDバルブが点かなくなったから交換した」 最近始めたTwitterでジムカーナ仲間のこんなTweetを目にしました。

 電球は長時間使用するといずれはフィラメントが切れて点かなくなります。それに対してLEDにフィラメントはありません。光るのは樹脂で固められた半導体です。長時間の使用で徐々に明るさが低下することはあっても、電球のように突然点かなくなることはない―。

 ところが。今回のようにLEDバルブが点かなくなってしまうというハナシはたまに耳にします。これは一体何が原因なんだろうか? 単純な接触不良だろうか? 調べてみたい。そこでジムカーナ仲間に点かなくなったLEDバルブをもらえないかお願いしてみたところ快諾頂きました。ありがとうございます! 分解して調べてみた結果を書いてみます。

 1つご注意。ここではこの製品の問題点を書いていますが、市販の全てのLEDバルブが同じような構造で同じ問題を抱えているわけではありません。適切な回路設計、部品選定、製造をされた製品ならば長く使用できるはずです。

 譲ってもらったLEDバルブ。どことなくDIY感がある製品です。まずは12Vをかけて故障を確認してみます。ちなみに丸いシールが示すのは発光色。

 故障確認中。青色は12Vをかけても点きません。確かに故障しています。一方赤色は点いて正常でした。点かない青色のLEDバルブを分解してみましょう。

 分解。ソケットの2箇所のハンダを溶かして取り除くと、中身を引き出すことができました。LEDに390オームの抵抗がLEDに直列接続されているだけのシンプルな作りです。

 故障原因として最初に疑ったのはハンダ付け部分の亀裂です。ハンダ付けは一見丈夫そうですが、長期的には部品との間に亀裂が入って導通不良になることがあります。感覚的に古い電気製品の故障原因は、ハンダ付け部の不良かスイッチの接触不良が多いように思います。

 しかしこの故障したLEDバルブではハンダ付け部に問題はありません。回路的には正常でした。

 LED単体での点灯テスト。抵抗を介さずに2.5V程度の電圧をLEDに加えてみたところちゃんと点きます。ところが抵抗を介して12Vを加えるとやっぱり点きません。

 抵抗の不良を疑って抵抗値を測ってみるも正常です。ではどうして点かない???

 LEDの発光部拡大。実はこのLED、3個のLED素子が内蔵されているタイプでした。3個の素子は並列に接続されています。点灯中はどうなっていたかというと、

 点灯している素子は2個だけで残り1個は点灯していません。電流を測ってみたところ、2個だけの点灯にしては大きすぎる電流が流れていました。原因判明。

 どうも故障した1個の素子が短絡に近い状態、ショートモードになっているようです。であればその素子に電流は多く流れ、直列に接続された抵抗の電圧降下は大きくなります。そして残り2個の故障していない素子も電圧不足になり点かなくなってしまっているのでした。

 ではなぜ1個のLED素子が故障したか? あくまで推測ですがLEDの素子のバラツキが原因ではいかと。LEDの素子にはそれぞれに特性バラツキがあります。同じ電圧を加えても流れる電流はばらつきます。このLEDのように3個の素子が並列になっていると、流れる電流はバラバラです。1個の直列抵抗では制御できません。ある素子の電流は少ないのに、ある素子では大きすぎるなんてことになります。LEDは温度が上昇すると電流が流れやすくなり、さらに温度が上昇、さらに電流が流れる、という熱暴走を起こす素子です。その悪循環から元々電流が多く流れていた1個の素子が壊れたのはないか―。って文章だけでは分かりにくい。興味のある方は下記参考文献をどーぞ。

 LEDを提供頂いたAさん、大変ありがとうございました。m(_ _)m またネタになりそうな物があったら分解させてください!


参考文献

 よくわかる最新LEDの基本と仕組み 長谷川 竜生/釜野 勝/上原 信知 共著 秀和システム

 高輝度/パワーLEDの活用テクニック CQ出版社

<追記>

 分かりやすく解説しているWebサイトがあったのでリンクを張っておきます。

  マルツオンライン LED基本ガイド

 このサイトの「接続の注意点 やってはいけない接続 図14、15」がまさに今回取り上げたLEDと同じ接続です。LEDを使いこなすのは簡単なようで奥が深いです。