チェーンが伸びたら交換が必要な理由

2020/11作成

この記事のタイトルを見た方は、きっとこう思うでしょう。

―そんな分かりきったことを何を今さら。

チェーンが外れやすくなるし、パワーロスにつながるし、異音も出るからだろ、と。

その通りです。

しかし、チェーンが伸びたら、なぜそうなるかを説明できる人は少ないのではないでしょうか?

掘り下げてみました。

ZX-14Rのチェーン、ドリブンスプロケット。

新車から37000km無交換ですが、マメに注油しているせいでチェーンに固着はありません。

しかし固着はなくても、徐々に伸びてきてはいます。

近々サービスマニュアル指示の方法で測定してみます。

チェーンが伸びるとは、チェーンを構成するピンとブッシュが磨耗してガタが大きくなることです。

チェーンは引っ張られるので、ガタが大きくなればその分だけ長くなり、簡単に言えば伸びるわけです。

スプロケットの歯とはローラーが噛み合いますが、ローラ同士の距離も長くなります。

チェーンと噛み合うスプロケットはどうでしょうか。

スプロケットの歯底も磨耗していきます。

すると、歯底の位置はスプロケットの中心寄りになり、歯底同士の距離は短くなります。

つまり、使い始めは一致しているローラー同士の距離、歯底同士の距離が一致しなくなってきます。

その差はチェーン1コマ分、スプロケット1山分ではわずかです。

しかしホイール側のドリブンスプロケットではその影響は大きくなります。

スプロケットの径が大きく、噛み合っている長さが長いため、差が累積するためです。

磨耗の進行によって、チェーンとスプロケットの噛み合いが徐々に悪くなります。

これが、チェーンが外れるなどの問題が起きる直接の理由です。

図解。

磨耗するにつれて、チェーン、スプロケットそれぞれの矢印部の長さが一致しなくなっていきます。

チェーンは張りを調整できます。

しかし、いくらチェーンを張っても、噛み合わせが合わないものは合いません。

チェーンが伸びていって調整範囲を超えた時、チェーンのコマを抜いて短くして合わせる猛者がいるようですが、

さすがに危ないのではと思います。

この話、分かっている人にとっては、それこそ何を今さら!でしょう。

しかしWeb上でこのことを書いているサイトは少ないので書いてみました。

バイク以外のWebサイトでは、産業用の大手チェーンメーカーである椿本チエインのホームページに

詳しい技術解説がありました。

興味のある方は参照してみて下さい。

椿本チエイン チェーンの摩耗寿命限界とは?

では、チェーンの寿命はどのように判断すればよいでしょうか。

バイク関係のWebサイト、雑誌などでは走行距離1~2万キロが交換の目安、とされていることが多いようです。

たしかにその位で伸びが大きくなってきたり、固着が発生してしまうこともあるでしょう。

しかし、保管状況やメンテナンスで、チェーンの伸びや固着の発生は大きく変わるので距離はあてになりません。

伸びについては測定した長さ、数値で客観的に判断すべきでしょう。

そこで役立つのがサービスマニュアルです。

サービスマニュアルには、伸びの測定方法と使用限度が書かれています。

それにしたがってZX-14Rのチェーンも測定してみることにします。

ここでは便宜上、「チェーンが伸びる」という表現を使いました。

チェーンを構成する部品が変形して伸びることがないことは理解しています。

しかし「伸びる」は一般的に使われていて、直感的に分かりやすい表現なのでそれを使いました。

カワサキのサービスマニュアルの書き方を参照してみると、「チェーンの磨耗」と書かれていました。

さすがはメーカー、ちゃんとしています。

シールチェーンで走行距離1~2万キロで交換、って短すぎなように思います。

屋外カバー無し保管、給油一切無しなら、そうなのかもしれません。

しかしカバーをかけて保管をしていて、たまに給油をしていればそんなに短くはないかと。

リッターバイクだとタイヤは1万キロ前後で交換になることが少なくないですが、

それに加えてチェーンも1~2万キロで交換ではお金も手間もかかりすぎです。

昔のノンシールのチェーンなら寿命はその程度だったのかもしれませんが。

固着したり、Oリングが破損していたりすれば別ですが、

本当はもっと使えるチェーンを交換してしまっていることが多いのでは?と思い始めました。

早めに交換したほうが安全なのは間違いないのですが。