R1-Z(その11・・・オイルポンプオーバーホール)

2014/4/29

アクセス解析してみたところ、このオイルポンプオーバーホール解説の人気が

高いようでした。そこでより分かりやすいように写真と解説を少し追加しています。

TZR250(1KT)、TDR250のオイルポンプも基本構造は同じなので作業方法は共通です。

オイルポンプをオーバーホールします。

というのはオイル消費量がどうも多い様な気がするからです。

約300kmの走行で約500ml以上減りました。つまり600km/lです。

Webで調べると正常なら1000km/l位なようなのでちょっと多いのです。

また、完全暖気後でも白煙が目立ちます。

今回はオーバーホールを通して構造をじっくり観察して理解したいと思います。

同時にオイル消費量が多くなる理由を調べます。

サービスマニュアル上ではR1-Zに関してはオイルポンプは非分解になっていて

問題がある場合はアッセンブリー交換となっています。そのため、構造なども解説されていません。

分解してじっくり観察して動作原理を知って、オイル消費が多い原因を解消したいと思います。

非分解指定のオイルポンプですがWeb上でオーバーホールに必要なオイルシールやガスケットの部品番号を

知ることが出来ます。インターネットってホントに便利ですな!

エンジンのオイルポンプ。

写真はカバーを外した状態です。カバーの中は少しオイルで湿っていますが、

大量のオイル漏れは無い様です。

取り外したオイルポンプ。

む、オイルを送り出すチューブの片方に抜け止めのクリップがついていません。

クリップが勝手に抜ける可能性は無いので、ここも昔適当な整備をされたっぽいです。

こんなんばっかしだなこの車両・・・。

最小ストローク測定。

規定値0.15~0.20mmに対して0.20mmでした。

分解開始。

ナットを緩めて分解していきます。左の真鍮製のワッシャーがシムです。

プーリのストッパーピンの取り外し。

小型モンキーなどで緩めます。ピンを外すと、プーリとスプリングが外れます。

プーリ取り外し。

外部からは分かりませんでしたが、結構オイル漏れが発生していました。

カバーの取り外し。

ビス4本を外してカバーを取り外します。

ガスケットで張り付いているので、小型のプラハンなどでカバーの外周を軽く叩いて外します。

カバーからのプランジャーの取り外し。

ピンを逃がすようにずらせば外せます。

カバー。

少し段付き磨耗しています。プーリが引っ掛かり気味でした。

ちょっと凝った構造になっていて、先端部はスティール、それ以外の部分はアルミ製です。

ピンがねじ込まれる先端部の強度確保が目的でしょうか。

プランジャ。

横棒がカムフォロアになります。ポンプ内部の回転シリンダーのカムで横棒を動かし、

プランジャが往復運動してオイルを送り出します。

本体の洗浄。

キャブレターの洗浄と同じように、洗浄しながら各流路の詰まりが無いことを確認していきます。

洗浄はパーツクリーナーで十分だと思いますが、オイルが送り出される流路の洗浄には一工夫必要です。

赤矢印の流路でオイルがエンジンへ送り出されるのですが、実はこの流路の内部に

ボールとスプリングで構成されたワンウェイバルブが入っています(RZ250などの分解図を見ると確認出来ます)。

そのため、出力側からパーツクリーナーを吹いても入っていきません。

そこで、先端を90度に曲げた金属ノズルを使って内側からパーツクリーナーを吹いて洗浄します。

金属ノズルはそのまま曲げると潰れてしまうので、あらかじめ針金を通しておいてから曲げます。

こちらのブログを参考にさせて頂いています)

底のプラグ。

本体へ圧入されているのですが少し浮いていて、内側から押し出すと簡単に外れてしまいました。

緩かったのでここからもオイルが滲んでいたかもしれません。

ヤマハの2ストオイルポンプオーバーホールを紹介しているWebページはたくさんありますが、

皆さんここはあまり外さないようです。

オイルポンプ部品構成(クリックで拡大表示)。

撮影のためにテーブルの上に並べましたが、細かい部品が多いので分解はトレーの中などで行ったほうが良いでしょう。

回転シリンダ・カバー・プランジャ。

摺動部は研磨スポンジで研磨しましたが、回転シリンダのオイルシールリップ接触部は少し

局部的に磨耗してしまっています。オイル漏れが解消しないかも。

底のプラグ組みつけ。

部品洗浄が終わったので組み立てます。

底のプラグは簡単に外れてしまうようでは困るので、液体ガスケットを極薄く塗って圧入しました。

はみ出して内部に入るとまずいので、プラグ側に薄ーく塗っています。

交換するオイルシール・ガスケット。

回転シリンダー組み付け。

ギアに引っ掛けるピンを忘れずに入れます。入れ忘れるとポンプが動作しません。

回転シリンダー組み付け完了。

回転シリンダーにはあらかじめオイルシールを圧入しておきます。

シールの刻印側を写真手前側に向けます。

カバーへのオイルシール圧入。

写真向こう側にシールの刻印側を向けます。

回転シリンダーカム部へのグリス塗布。

ここはオイルに浸かるわけでは無いのでグリスが必要です。

プーリの組み付け。

プーリの内側とカム部にもグリスを塗布します。

組み立て完了。

最小ストローク測定箇所。

サービスマニュアルの記述は分かりにくいのですが矢印部が最小ストロークの測定箇所になります。

プーリのカムにピンが乗り上げていない状態、かつプランジャが持ち上がっているときの隙間が

最小ストロークになります。

アイドリング時はこの隙間の分しかプランジャがストロークできないので

オイルの送り出し量が抑えられます。

アクセルを開けてYPVSの開度も大きくなってくるとプーリがプーリ自体のカムで押し下げられ、

隙間が大きくなり、プランジャのストロークが大きくなってオイルの送り出し量が増える仕組みです。

分解して観察することで仕組みがよく分かりました。

なぜオイル消費量が多かったのかですが、ひょっとするとプーリの戻りが悪かったのでは?と推測しています。

アクセルを開けたり、回転が上がってYPVSが開くとプーリが回ってストロークが大きくなるのですが、

戻りが悪いとストロークが大きくなったままです。

オイルポンプ取り付け準備。

エンジン側に残ったガスケットを取ったら、ウォームギア先端のワッシャーを忘れずに入れます。

オイルポンプ取り付け。

新しいガスケットを入れてポンプをネジで固定します。

取り付け完了。

エア抜き状態とオイルが送り出される様子を観察したかったので、

一旦透明なホースを取り付けてみました(水・空気用のホースで耐油ホースではないのであくまで暫定)。

エア抜きネジを緩めてオイルを溢れさせた後でエンジンを始動し(アイドリングのままでOK)、

プーリの駆動ケーブルを引っ張り(緑矢印、赤矢印の部分に入るクリップは抜いておく)、

ポンプを最大ストロークにしてエア抜きをしました。

エンジンはアイドリングのままでも、しばらく最大ストロークにしておけば

じきにオイルが送り出される様子が観察できます。

さて、オイル消費は減ったかな?

とりあえず100kmほど走ってみたところ、オイル消費量は約100mlでした。

ということは、1000km/lです。正常になったようですがもう少しデータをチェックし続けることにします。

回転シリンダーの磨耗については問題無いレベルだったようで、

オイル漏れは発生していません。

R1-Zのサービスマニュアル上では、オイルポンプは非分解とされています。

そのため特に整備方法も指示されておらず、故障時はアッセンブリー交換となっています。

純粋にオイルポンプ部だけを見ると、オイルに浸かっているので外部からの潤滑は不要(というか不可能)ですが、

プーリやカム部へはたまにはグリス潤滑が必要でしょう。

ここのカバーを外してしまう人がいるようですが、

埃が侵入付着する上に雨などでグリスが流れてしまうので、外すのは絶対避けるべきです。