スズキ ベアリングインストーラーセット 2021/9

ベアリング交換時の圧入はテキトーな方法で行ってはいけません。ホイールベアリングを例にすると、ホイールに叩きこんではいけないのです。正確には叩きこんでよい場合もあるのですが限られます。そのことを広く知ってもらいたいと考えて以前書いた記事がこちらです。

ホイールベアリングの交換方法について考えてみる

記事作成から数年たった今、ベアリングの交換方法で検索するとこの記事が上位に表示されます。多くの方が参考にしてくれているようです。

交換作業は作業性も考えると油圧プレスを使うのがベストです。ですがホイールをセットできる大型の油圧プレス機を用意できるのはバイクショップでも限られるでしょう。個人ではまず無理です。そうなるとネジを使った圧入になりますが、ベアリングのサイズに合ったワッシャーなどを用意するのは簡単ではありません。

ちょうど良い工具はないだろうか。そんなことを考えている時に見つけたのが今回取り上げるスズキの純正工具です。ZX-14Rの整備の参考にするため同クラスのハヤブサのサービスマニュアルを眺めていたところ、ホイールベアリングの交換作業に指定されていました。

ZX-14Rの走行距離は4万キロを越えました。ホイールベアリングは新車から無交換です。頻繁に点検していて今のところは問題ありませんが、そろそろ交換時期を迎えてもおかしくはありません。

近く行うであろう交換作業ではスズキ製純正工具を使ってみたい。しかし工具の直径がベアリング外径よりわずかに小さくなければ使えません。Webで調べても工具の直径の情報は見当たりませんでした。

直径は不明でしたが、ハヤブサとZX-14Rのベアリングのサイズに大差はなさそうなこと、工具は数サイズに適合するようになっているため少なくとも一部は使えそうです。思い切って購入してみたので紹介してみます。

スズキ ベアリングインストーラーセット。

品番09924-84510(-000)、税抜価格8,600円(2021/9現在)、信頼のMADE IN JAPAN。総スティール製でズッシリと重いです。

部品構成。

ベアリングを押し込む円盤5枚、シャフト1本、ナット2個。シャフトのネジはM12ピッチ1.75。円盤は片面がテーパーになっています。ステムのテーパーローラーベアリングへの使用も想定しているのかも。

円盤サイズ構成。

4種類5枚がセットでA~Dの記号が振られています。それぞれの外径と枚数はA 61.5mm 1枚、B 57.5mm 2枚、C 51.5mm 1枚、D 51.5mm 1枚。CとDの外径は同じですが、テーパー側の角度と寸法がわずかに異なります。

使用方法。

ベアリングとハブに合わせて円盤を選択してシャフトに組み合わせ、ナットを締め込んでベアリングを圧入します。実際の使用状態を掲載したいところですが、それはその機会に。

肝心のZX-14Rで使えるかどうか。それはベアリングのサイズによります。ZX-14Rの足回りのベアリングの型番とサイズは次の通りです。

フロントホイールベアリング 6005、内径25mm、外径47mm、幅12mm

リアホイールベアリング 6205 内径25mm、外径52mm、幅15mm

リアスプロケットハブベアリング 6006 内径30mm、外径55mm、幅13mm

圧入作業ではベアリング外径よりわずかに小さな円盤を選択します。なのでZX-14Rでこのセットを使おうとしても外径52mmのリアホイールベアリングにしか使えないのでした。残念。

実はスズキ ハヤブサのサービスマニュアルにはもう1つのベアリングインストーラーの使用も記載されています。品番09941–34513、品名ステアリングレースインストーラーです。このセットとは異なる外径のベアリングに適合するようです。機会をみてそちらも購入してみますか。