倒立フォーク スプリングコンプレッサー

ZX-14R用に製作した倒立フォーク スプリングコンプレッサーについての記事です。

あらかじめ宣言しておきます。

細かいウンチクを書いているので文字多め、分かりにくめです。

特に興味のある方だけどうぞ読んで下さい。

ZX-14Rのフロントフォークからオイル漏れが発生してしまいました。

基本的にオイル漏れを修理するには分解してオイルシールを交換しなければなりません。

分解するためには、フォークスプリングを一時的に圧縮して縮めておく必要があります。

そのためにはカワサキ純正の特殊工具を使用するのが簡単確実ですが、いかんせん高価です。

最低限必要な物だけで見積もってみたところ合計4万円以上!でした。

使用頻度は低くショップでもないのでそこまでは出せません。

バイクメーカー以外が販売している工具を買って使用する方法もあります。

しかしそれでも1万円以上する上、ある理由(後述)のために使う気になれません。

さらにヤフオクでは金物を組み合わせた簡易工具が売られています。

使えなくはなさそうなのですが、これも同じある理由で使う気になれません。

工具の仕組みとしてはそれほど難しい物ではありません。

また、私はプロではないわけでお金はかけられなくても時間はかけられることから、

自作してみることにしました。

製作に当たっての条件は次の通りです。

安全であること。

具体的には圧縮中のスプリングが突然外れたりしないこと。

倒れたりもしないこと。

安価に出来ること。

手に入りやすい材料、工具で製作できること。

特に重要なのが「圧縮中のスプリングが突然外れたりしないこと」です。

フォークスプリングは強力です。

フロント荷重を支えるだけの反発力があります。

このスプリングを圧縮するので、工具が受ける力はかなりの大きさです。

突然外れて顔などに当たれば大怪我の恐れがあるので、簡単に外れない構造が必要です。

製作に当たってはフォーク内の部品寸法を調べる必要があります。

そこでまず簡易的に分解し、部品寸法の測定を行いました。

フロントのジャッキアップ。

センタースタンドを立ててから、エンジンのオイルパンをジャッキで上げ、

フロントタイヤを浮かせます。

ハンドルの取り外し。

作業の邪魔なので外しておきます。

トップブリッジのフォーククランプボルトを緩めます。

フォークのトッププラグを緩めるための準備作業です。

クランプされたままだと、緩めにくい可能性があります。

トッププラグを緩めます。

ソケットのサイズは24mmです。

イニシャルアジャスターの出っ張りから逃げるために、ディープソケットを使用しました。

ただし、イニシャルアジャスターを締め込んであれば、一般的な深さのソケットでも作業可能です。

トッププラグが外れたら、

ジャッキを下げてフロントタイヤを接地させます。

すると、

トッププラグや中のカラーが押し出されて露出します。

内部構造。

カラー(白い筒)は下側に接するフォークスプリングで押し上げられています。

トッププラグは内部を貫通するロッドに取り付けられていて、固定ナットはカラーの内側にあります。

フォークを分解するには、つまりトッププラグを外すには、スプリングの力に打ち勝って

カラーを押し下げ、固定ナットを露出させる必要があります。

カラーを押し下げる方法の1つは、カラー側面の穴(青矢印)に棒などを差し込み、押し下げる方法です。

バイクメーカー以外が販売している工具やヤフオクで売られている簡易工具もこの穴を利用します。

しかしこの方法には問題が2つあります。

1つは差し込んだ棒がアウターチューブに干渉して十分に押し下げることが出来ないことです。

十分に押し下げられないと、固定ナットに工具をかけるのが難しくなります。

もう1つは樹脂製のカラーが破損する恐れがあることです。

昔作業したバイク(ZXR250がそうでした)では、カラーが金属製でした。

そのため工具を穴にかけても簡単に破損することはありません。

サービスマニュアル記載の手順も、カラーの穴に特殊工具の棒を差し込んで押し下げるようになっていました。

しかしZX-14Rで同じ方法を行った場合、樹脂製のカラーを破損してしまうかもしれません。

そこで赤矢印の部分(マニュアル上の呼称は「ワッシャー」)を押し下げることにします。

ここなら押し下げるストロークは十分に稼げ、金属製なので破損することもなさそうです。

メーカー純正の特殊工具はこのワッシャーを押し下げる構造です。

作業中に外れたりしないよう、ワッシャーがはまって逃げないようになっています。

同じような構造になるよう検討後、製作を開始しました。

「ユニクロワイド隅金」(縦横長さ75mm、幅30mm)。

140円×2個。

ワッシャーへ引っ掛けるのに使用します。

2x4(ツーバイフォー)材 長さ6FT(1820mm)。

370円×1本。

本体として使用します。

これら以外の材料はネジが少々。

金物の加工。

ディスクグランダーで削って段差を作ります。

グラインダー使用時は皮手袋と保護眼鏡を着用します。

軍手は巻き込まれる恐れがあるので非常に危険です。

皮手袋を着用しましょう。

加工済みの金物の角材への取り付け。

下穴を開けておいてからネジで固定します。

ちょっと角材の幅が小さかったかな?

金物に削って作った段差。

この部分で、

ワッシャーを引っ掛ける算段です。

これならスプリングの強い力が加わっても外れないので安全です。

本体製作のための採寸。

メジャー先端はフォークボトムケース先端に合わせています。

ワッシャーまでは約750mm。

完成!

測定結果やジャッキの高さを考慮して、柱の長さは900mmに設定しました。

倒れにくいように横方向の脚も取り付けました。

ここにワッシャーを引っ掛けて、

下側にセットしたパンタグラフジャッキでボトムケースを押し上げます。

するとワッシャーとカラーを介してスプリングが圧縮され、トッププラグの固定ナットが露出します。

イメージ通りの物が製作できました。

製作費も合計1,000円以下で済みました。

ちょっとガタつくので底面の外寄りにゴム足でも追加すればさらに良いのですが、

使用頻度を考えるとそこまでする必要もなさそうです。

さて、実際の分解・組立作業で目論見通り働いてくれるかな?

使ってみましょう。

セットしたフォークAssy。

上端部。

ワッシャーに金具を引っ掛けています。

下側から見上げた状態。

パンタグラフジャッキを持ち上げると、

トッププラグが持ち上がり、固定ナットも露出します。

トッププラグの取り外し作業。

露出したナットにレンチをかけて緩めます。

トッププラグの取り外し完了。

ナットが緩んだら、あとは手で回せばトッププラグは外れます。

簡単な自作工具でしたが、目論見通り機能してくれました。

これでようやくシール交換などを進められます。

詳しい作業についてはこちら。

フロントフォーク シール交換(分解・点検) 2019/12-2020/1

各部の寸法メモ。

記録として載せておきます。

参考に?どうぞ。