自作バキュームゲージ 2020/5

ZX-14Rの同調調整を行うために、バキュームゲージを自作しました。

手元には約20年前に自作した2連のバキュームゲージがあるのですが、4連で新調です。

今から20年ほど前に自作したバキュームゲージ。

当時乗っていたBandit250かZXR250の調整用に作りました。

当時は学生でお金が無く、今のように安価なバキュームゲージも市販されていなかったので、

ゲージを買ってきて自作しました。

2連でも手間さえかければ調整可能なので、安く作るために4連にしませんでした。

最近は4連のバキュームゲージが安く販売されています。

おそらく中国製で、最も安いものだと5000円前後から購入できるようです。

しかし、あえて自作しようと考えたのには理由があります。

1つ目は、安い市販品は精度に不安があること。

ZX-14Rのサービスマニュアル指示の負圧標準値は36.66±1.3kPa(275.0±10mmHg)です。

この値に完全に収める必要はないのかもしれませんが許容範囲の±1.3kPaは結構狭い値です。

一般的にバキュームゲージに使用されている負圧計の測定範囲は-100~0kPaです。

測定誤差が仮に±5%あったとすると、指示値は±5kPaの誤差となり、±1.3kPaに収めるのは困難です。

この問題は、精度保証された圧力計を使えば軽減できます。

今回使った日本製圧力計の誤差は1.6%なので、測定誤差は±1.6kPaとなります。

まだ不十分ですが、安価な精度保証されていない圧力計よりは断然安心です。

2つ目は、たまたまですが国産の圧力計が安く入手できたことです。

ヤフオクで未使用新品が大量出品されていて、1個780円で購入できました。

3つ目は、自分で作れる物は作りたいからです。

バイクの整備が好きですが、工具を作るのも好きなので、ちょうど良い題材にもなります。

前置きが長くなってしまいましたが、ここからは製作記録です。

ヤフオクで購入した圧力計。

測定範囲は-100~0kPaです。

市販バキュームゲージの表示部直径は60mmが多いようですが、これは一回り大きい75mmです。

老眼の目にも優しく見やすいかも。

下の小さな圧力計はまとめて購入したもので、燃圧測定に使う予定です。

圧力計詳細。

箱のデザインが古いようなので、どうやら長期在庫品のようです。

メーカーの長野計器は地元長野県上田市の圧力計メーカーです。

上田は父が生まれて育った地でもあります。

農産物と同じように、出来るだけ地元の製品を使いたいと思っているのでちょうど良かった。

精度1.6%を示す1.6の表示。

ただし注意点が1つあって、これはゲージを垂直に保った場合です。

垂直以外の姿勢では針の示す位置がずれてしまいます。

検証は後ほど。

変換ソケットと絞り。

変換ソケットを介して、絞りを圧力計に接続します。

絞りはPISCOというメーカーのスロットルバルブという商品で、産業機器に使われる物です。

絞りで流路を適当に狭くしないと、圧力計の針が激しく振れてしまいます。

エンジンの負圧は吸気のサイクルに合わせて変動しているためです。

仮に無しでも平均値を読み取ることはできそうですが、それでは不便です。

また、圧力計にも良くはないので(すぐに壊れたりはしませんが部品磨耗から寿命低下につながる)、

絞りは必要です。

ちなみにこの部品、スピコン(スピードコントローラー)とは違います。

スピコンは一方向の流れだけ絞りますが、これは双方向を絞ります。

組立て開始。

圧力計のネジ部にはシールテープを巻いて気密します。

実はこのネジの接続、適切ではありません。

管用平行おねじとテーパーめねじの接続となり、ネジ山が2、3山しか噛み合わずシール面も狭いためです。

ただしバキュームゲージとしての使用で、負圧しかかからず危険性はないことからこの接続としています。

気密テスト。

注射器で負圧にしておき、スロットルバルブを閉めます。

漏れがなければ、一晩位放置しておいても値はほとんど変わらないはずです。

逆に漏れがあれば、空気が徐々に流れ込み、常圧に近付いていきます。

用途からすると、微小の漏れなら問題ないですが。

固定板の加工。

シナ合板を切り出し、取っ手にするための長穴を開けます。

当初は前作同様アルミ板を予定していたのですが、思いのほか高かったこと、

切断が大変なことから、シナ合板にしました。

仮に使用時に車体に接触しても、傷をつけにくいメリットもあります。

塗装。

せっかくなので、汚れにくいようにクリアラッカーで塗装しました。

ホースの接続。

絞りに適合する外径6mmのホースを挿し、そこにホースを接続します。

これで、エンジンの負圧取り出し部に接続できます。

ホンダ車の場合は、負圧取り出し部がメネジになっていてホースのままでは接続できません。

アタッチメントが必要になります。

完成。

吊り下げて使うために、チェーンも取り付けました。

ばらつき確認。

T字と十字のジョイントを使い、注射器に4個全てのゲージを繋いで引きます。

こうすると本来は4個全て同じ値を示すはずですが、実際はそれぞれの誤差があるのでばらつきます。

公称の誤差の範囲で少しばらつきがありました。

部品代の内訳は以下の通りでした。

合計は9002円ですが、実際には通販利用の送料がかかっているので、大体1万円位になりました。

メイドインジャパンがこの値段で作れれば上出来でしょう。

圧力計 780円×4個 = 3120円

変換ソケット 600×4個 = 2400円

スロットルバルブ = 506円×4個 = 2024円

シナ合板 820円

圧力計固定ネジ 100円

ラッカースプレー 198円

ビス止め端子 180円

チェーン 160円

圧力計の姿勢差について

細かい話になりますが、ここで使った圧力計(ブルドン管式)は垂直でないと正しい圧力が表示されません。

圧力によってたわむ内部のブルドン管が重力の影響を受けるためです。

簡単に実験してみました。

垂直設置の2個のゲージ。

検証用に連結しているので同じ値を示していますが、

1個を水平に置くと、針は1kPaほど高い側にずれました。

大きな差にはなりませんが、頭の片隅に覚えておいても良いかもしれません。