先日の車検を機に、フロントのブレーキディスクとブレーキパッドを交換しました。その時に気になったのは今まで装着していたパッドの偏摩耗です。
ZX-14Rのフロントブレーキはキャリパー1個あたりパッド4枚を使用。左右合計では8枚。全てのパッドの摩耗がほぼ均一になるのはあり得ないのかもしれませんが、バラツキが気になったのでした。
交換したパッド。
対となる左右で最大0.5mm位摩耗量が違います。この位は正常な範囲で気にするレベルではないのかもしれません。
しかしあらためてピストンの動作を確認したところ、あきらかに固着気味のピストンがチラホラ。パッド交換や車検の度に洗浄とピストンのグリスアップはしてきましたが、キャリパーの完全分解整備はしたことがありません。
新車購入からはもう11年、49,000km走行。シール交換も含めた分解整備をすることにしました。
ブレーキフルードの抜き取り。
ブレーキホース取り外し前に注射器で引っ張ってフルードを抜きます。ブレーキラインを外した時のフルード漏れを少なく出来ます。
キャリパーボディの結合ボルトを緩めているところ。
キャリパーがフォークに取り付けられている状態でボルトを緩めておきました。ネジこみ式のパッドピンと同様、キャリパー単体状態では緩めるのが難しくなるのではと予想したためです。
ソケットにユニバーサルジョイントの組み合わせで手前側のキャリパーを避けて緩めることができました。
しかしクリアランスはあまりありません。同じことをするなら手前側のキャリパーを一旦外しておいた方が簡単でしょう。
ボルトはZX-14Rでは珍しいトルクスボルト(サイズE12)。わざわざトルクスボルトを使っているのは安易に分解してほしくないとのメーカーの意思でしょうか。ヤマハなんかだとキャリパーの分割はしない前提らしく、分割面のシールの部品設定がありません。
分割したキャリパー。
フォークから取り外し後、3本のトルクスボルトを完全に緩めて抜き分割しました。合わせ面には小さなシールが1個入っています。
ピストンの抜き取り。
ピストンツールを使って引き抜きます。やはり固着気味のピストンがいくつかありました。
取り外したピストン。
汚れが固着している物もありましたが目立った傷みはないので再使用します。ちなみにピストンはアルマイト処理された?アルミ製です。スティール製ピストンと違って軽く、錆の心配もありません。
しかし熱伝導はというとスティール製と比較して良いのでべーパーロックはしやすいのかも。ただしサーキットでガチで走らない限りべーパーロックはしないでしょうね、多分。
シールの取り外し。
キャリパーボディを傷付けてしまう恐れを考えると、竹串など硬すぎない物を使うのが良いのは分かります。
ですが実際に竹串で試してみたところ、先端が簡単に折れてしまい使い物になりません。仕方ないのでピックツールを使って慎重に作業しました。
取り外したダストシール。
溝に汚れが溜まっていました。ピストン固着の一因でしょうか。
分解洗浄を済ませたキャリパー。
点検しましょう。
シール溝。腐食もなくキレイで全く問題ありません。アルマイト処理のおかげ。
昔のバイクのキャリパーはこの部分がアルミ生地のままの物がほとんどでした。そのため腐食で荒れてしまいシールを圧迫し、ピストンの動きを妨げていることが少なくありません。分解整備時はピックツールでカリカリと掃除していたっけ。
しかしこのようにアルマイト加工されていれば簡単には腐食せずキレイなままです。昔からアルマイト加工を施していたブレンボはエライ。
X(旧Twitter)でもつぶやいたブリーダーボルトについての考察。
エンジンオイルのドレンボルトにはアルミや銅のワッシャーが入っていて漏れを防いでいます。クーラントのドレンボルトとかブレーキのバンジョーボルトも同じ。
ですがこのキャリパーのブリーダーボルト先端にワッシャーの類は入っていません。それでも漏れが発生しないのはテーパーの構造と高い面圧のせい、と考えていますがどうなんでしょう?
新旧シール比較。
左が今まで使用の物、右が今回用意の新品。ぱっと見に違いはありません。
今まで使用の物アップ。傷や変形、摩耗は見つからず。折り曲げてみても亀裂なし。弾力も新品との違いは分からず。
つまり新品との差があるように思えません。サービスマニュアルでは新品交換が指示されていますが、交換する意味は見い出せませんでした。
ただし11年も使ったわけなので、新品交換で安心感が得られるのは確か。
新品シールのオイルシール組み込み。
ブレーキフルードを塗って組み込みました。
オイルシールとダストシール、そしてピストンを組み込む時には油脂類を塗るか否か、塗るなら何がベストなのか? サービスマニュアルではオイルシールとダストシールにはシリコングリスを、ピストンにはブレーキフルードを塗る指示になっています。
私の場合、ブレーキ専用潤滑剤のメタルラバーをピストンに塗っていた時期もありました。しかし雨天走行で流れやすく長持ちしない印象なので、最近ピストンに塗っていたのはシリコングリスです。
他車種での指示は?とふと思い、手持ちの他の車種のサービスマニュアルやWeb上で検索してみるとマチマチでした。
ホンダやヤマハはダストシールのみシリコングリス、オイルシールにはブレーキフルードの指示が多いようだったため、今回はそれに倣いました。
シリコングリスはフルードに溶けないのでフルードに接するオイルシールにはブレーキフルードを、雨水にさらされるダストシールには耐水性に優れたシリコングリスの組み合わせが良いと考えたためです。
ただしどの方法でもサービスマニュアルの指示に従う分には致命的な問題にはならないでしょう。
ダストシール組み込み。前述の通りシリコングリスを塗布。
ピストン組み込み。シリコングリスを薄く塗布。
パッドスプリングについての考察。
写真は撮影用に仮組み。
パッドスプリングってどうして装着されているんでしょうか? なくてもピストンはパッドを押せるのでブレーキは効きます。
しかしスプリングがないとパッドはガタの分だけ動いてしまうので異音を発生させるかもしれません。スプリングはパッドをキャリパーに押し付けるようにセットされ、ガタつきを抑えるので異音の発生を抑えることができます。
異音が少々発生しても問題ないレース用キャリパーなら必要ないのかもしれません。現に昔所有していたブレンボのレーシングキャリパーにはパッドスプリングはありませんでした。わずかな違いですがスプリングがない方が風通しが良いので放熱性も良く、分解組み立てもラクです。
キャリパーボディ合わせ面のシール。
新品に交換。
キャリパーボディの組み立て。
ボルトを規定トルクで締め付けます。
組み立てが完了したキャリパー。
フルード注入、エア抜き。
フルードはホンダ純正です。ホームセンターなどで入手可能で値段もお手頃。特にこだわりがなければお勧めのフルードです。
入念にエア抜きをしたのですがタッチは今1つ。そこで1週間後に再度エア抜きしたところ良好なタッチになりました。微妙にエアが残っていたのかも。
整備後のインプレ。わずかに効きが良くなったような気もしますが思い込みかもしれません。しかしそれでも良いのです。今回の分解整備でしばらくは安心なので。
パッドの偏摩耗についてはすぐには分かりませんが、改善を期待しましょう。