ZZ-R1400やZX-14Rを100,000km以上走らせている猛者はチラホラいます。メガスポーツで長距離ツーリングも快適なので当然といえば当然です。
対して私のZX-14Rの総走行距離は約49,000km。短くはありませんが、猛者たちに比べれば長くはないでしょう。
しかし比較的寿命の長い部品の交換時期を迎えつつある距離でもあると感じています。前後スプロケ、チェーン、ブレーキディスクなどです。
今回はフロントのブレーキディスクを交換、合わせてブレーキパッドも交換します。
新車から装着のフロントブレーキディスクの厚さ測定。最も薄い部分で約4.4mm、摩耗限度の4.5mmを下回っています。
少々下回ったからと言ってすぐに危険ではありません。しかし確実に強度や熱容量は低下しているわけで良いことではありません。交換します。
交換用に購入の中古ブレーキディスク。ヤフオクにて左右セットで16,000円で落札。
ブレーキディスクは消耗品でゆがんでいる恐れもあるので本当は新品が良いのです。分かっていますとも。
しかし何しろ新品は安くありません。純正だと2枚で75,398円!です。サンスター製を安いところで買っても50,000円位。ブレンボ製は60,000円位。
中華Arashi製なら25,000円位ですが破損がコワイ。意外と問題なく使用している方も少なくないようですが。
どうしようかと思案しているうちにヤフオクで見つけたのがこのディスクなのでした。実はこのディスク、ZX-14R用ではなく2023年式ZX-6Rの物。サンスターなどの社外ディスクが両車共通の設定となっているので使えるはずと目論んでの購入です。
直径は310mm、公称厚さは5mm。部品番号はZX-14R用が41080-0570-5C、ZX-6R用が41080-0590-5C、わずかに違います。しかしぱっと見は同じものに見えます。
使用距離は10,000km以下とのこと。厚さを測ってみたところ元の厚さ(パッド非接触部)は4.96mm。対してパッド接触部の最薄部は4.89mm。摩耗限度の4.5mmまではまだ0.4mmほどあり十分使えます。
ただしいくら摩耗は少なくてもゆがみで大きく振れているようならゴミです。こればかりは装着してから測定してみないと分からないので、中古ディスク購入は博打です。これは果たして?
ブレーキディスクの取り外し。ボルトには緩み止めが使われているので簡単には緩みません。そこでバーナーなどで温めて緩み止めの効きを弱くしてから緩める方法がよく紹介されます。
しかし今回は無理なく緩められたので温めずに作業しました。ただし慎重を期すため工具はヘックスソケットにTハンドルとしました。
ラチェットやL字型のヘックスレンチでは回転トルク以外も作用してボルトと工具の勘合部がこじられます。こじって舐めてしまうと一大事。その点Tハンドルなら回転トルクしかかからないので比較的安心です。
ベアリングの点検。ディスクは無事に外れました。新ディスク(中古ですが)を取り付ける前にベアリングの点検をします。指で回してみてガタやゴロツキがないか。もしこのベアリングにガタやゴロツキがあれば、ディスクのゆがみ以前の問題です。交換しなければなりません。
点検結果は異常なし。間もなく迎える50,000kmまでは問題なく使えそう。
固定ボルトメネジの清掃。タップでさらって古い緩み止め剤を取り除きます。合計10個のメネジをさらうのは少々面倒なので電動ドリルドライバーの力を借りました。
残った緩み止め剤の影響でボルトがスムースに入らないと、規定トルクでボルトを締めても十分な軸力が得られません。軸力が不足すればディスクの固定が不十分になります。
新旧比較。左が今まで使用の物。右がZX-6R純正。違いは分かりません。
さらに比較。やっぱり違いは分かりません。本当はオフセットの比較測定をするつもりでしたが、構造上簡単には出来なかったので断念。しかし見た目はでは同じようでした。
新品ガスケット(シム)の装着。ここからは取り付け作業です。
ZX-14Rには鳴き止めが目的と思われるガスケット(シム)がハブとディスクの間に入っています。交換しなくても問題ないかもしれないのですが、私は新品へ交換しました。凹凸があるとディスクの振れにつながるかもと考えたためです。
ちなみにあとからサービスマニュアルを参照したところ、新品交換が指示されていました。
ボルト固定。トルクレンチで規定トルクで締め付けます。
ボルトは新品を用意しました。ZX-14Rでは新品ボルトの使用は指示されていませんが、安心感を得るために新品投入です。メーカーによっては新品ボルトの使用が指示されています。
左右ディスクの交換完了。
本当はディスクと共締めされる回転検出のローターも交換したかったのです。錆が若干目立っているので。しかし新品は5,000円ほどするので、見た目だけにそれだけ出すのはもったいない。継続使用です。
振れの測定。
ホイールをフォークへ組付けてから測定です。測定にはダイアルゲージとマグネットスタンドを使います。ZX-14Rは倒立フォークなのでスティール製インナーチューブにマグネットスタンドを吸着させることができます。
これが正立フォークだとこうはいきません。固定に一工夫必要です。
測定結果。これは左側。振れは0.08~0.10mm位でした。標準値0.15mm、使用限度0.3mmなので問題ありません。
測定位置について。本来は振れが最も大きくなりやすいディスクの最外周部で測定すべきでしょう。しかしペータルディスクでは最外周部ではうまく測れないので内側、写真位置での測定です。
同じく右側。0.06mm位でした。こちらも合格。
厚さ、振れともに問題なし。博打に勝ちました。運が良かった!?
ところで振れの確認を必ずしもダイアルゲージで測って行う必要はありません。ダイアルゲージとスタンドを持っている方は少ないでしょうし。
測定しなくても空転させた時に部分的にパッドが接触する音がかすかにする程度なら問題ないはずです。
新品のブレーキパッド。
ちょうどパッドも交換時期を迎えていたので用意しました。今まで装着のZCOO(非Type C)に代えてRKのメガアロイMA-Xです。値段の割には効きも良いと評判のパッド。
パッドに組付けられているシム。
鳴きを防ぐためと思われるステンレス製シムが組付けられています(キャリパーピストンへの断熱の目的もあるかも?)。今まで使用のZCOO製パッドはわずかに鳴いていたので、鳴きやすいのかもしれません。
摩材の厚さ測定。
3.8mmほどでした。純正やZCOO製とほぼ同じ。
組付け位置のマーキング。
分解整備後に元の位置へ復元できるようにするために行いました。位置が変わると一時的とはいえアタリが変わってタッチが悪化します。
マーキングにはリューターを使用。
取り外したパッド。
39,000km使用です。パッドによっては残り0.5mmほどになっている部分も。目一杯使い切りました。使い過ぎとも。
新品パッドを組み込んだキャリパー。
例によってキャリパーは丸洗いしてピストンにはシリコングリスを塗っています。
今回はいったんこれで車体へ戻します。いったん、というのは近くキャリパーを完全分解して整備することにしたから。
点検したところ動きがかなり悪いピストンがありました。揉み出しをしても改善しません。取り外したパッドの摩耗がばらついていること、やや引きずり気味であることもそれを裏付けています。完全分解してピストンやシール、シール溝を点検しましょう。
2年間使用のフルード。
熟成?して琥珀色です。今回はホンダ純正のDOT4へ交換しました。
皆さん気になるRKメガアロイMA-Xブレーキパッドのインプレを少々。
今まで装着のZCOOと比べると効きは若干弱めです。8掛け位のイメージでしょうか。ZCOOでは掛け始めからガリガリ効くイメージですが、メガアロイはそうではありません。入力に対してリニアに効いていくフィーリングです。
ですが十分なレベルなので値段を考えるとおすすめできるパッドかと思います。シムがあるせいか鳴きもありません。