R1-Z(その40・・・1KTのキャブをオーバーホールして流用する ①分解)

R1-Zでは定番チューンの1KT(初期型TZR250)キャブの取り付けをします。

現状のノーマルキャブでも高回転のパワー感は結構あって楽しいのですが、

口径の少し大きな1KTのキャブに変更すると低中回転はあまり犠牲にならずに

高回転がより力強くなるとのことなので交換してみます

(単純にイジリネタが欲しいという理由もありますが)。

1KTのキャブはヤフオクでちょくちょく出品されていますが、

放置車両から取り外された物がほとんどで、取り付け前にはオーバーホール必須です。

私のホームページのアクセス解析をすると、R1-Zのキャブレターオーバーホール記事の

人気が高いことから、今回1KTキャブのオーバーホールも詳しく解説してみます。

基本的な構造はR1-Zも1KTも同じです。

キャブのオーバーホールでは次のようなポイントがあります。

1.細かい部品が多いので無くさないこと

慣れないと部品構成が分からず、気付かないうちに部品を紛失していたりします。

紛失した部品を購入しようにも、単品では購入出来ない部品もあったりします。

部品構成をよく確認しながら分解しましょう。

2.ネジやジェットのネジ溝をなめない

キャブに限った話しではないですが、ネジ溝をなめるとリカバリーが

非常に困難になってしまう場合があります。

本体を傷める恐れがあるので、インパクトドライバー、タガネやポンチが

使いにくかったり、奥まっていて使えなかったりします。

くれぐれも慎重に作業しましょう。

3.洗浄は流路の貫通を確認する

長期放置キャブは流路が詰まっていますが、キャブクリーナーなどで

流路が貫通していることを確認しながら洗浄します。

なんとなくクリーナーを穴へ吹くだけでは不十分です。

4.腐食が激しいジェット類は新品交換

腐食されたジェットは綺麗に掃除したとしても、内径が拡がってしまっています。

ミクロンオーダーの拡大でも番手が変わってしまうので、

腐食が激しい場合は新品交換が必要です。

長期放置キャブではゴム部品も交換になるので、

オーバーホールしても使えるのは本体 + アルファ程度になってしまうのが現実です。

ヤフオクで入手した中古の1KTキャブ。

落札相場はいつも10,000円前後のようですが、運良く4,300円で落札できました。

まだ完全に開梱していないのに、腐ったガソリン臭が漂ってきます。

1KTキャブ。

何故かフロートチャンバーは外してありました(理由は後述)。

相当長期間放置されて熟成?されたようで、腐ったガソリン臭がヒドイです。

1KTキャブがR1-Zキャブと大きく異なる点は下記の通りです

(細かい違いは他にもありますが)。

1.口径が28mmで、R1-Zの26mmより2mm大きい。

Webでググると低中回転はあまり犠牲にならずに高回転が元気になるそうですが、

どうなんでしょうかねぇ。交換して比較してみます。

2.キャブヒーターが無い。

気化促進やアイシング防止のためのキャブヒーターがありません。

R1-Zのキャブではクーラントを流す流路があって、キャブを暖めるようになっています。

真冬でもバイクに乗る私としてはアイシングはちょっと心配ですが、

なったらなったでノーマルキャブに戻すことにします。

口径測定。

測ってみました。確かに28mmです。

オーバーホール開始。

解説用に一旦フロートチャンバーは取り付けています。

ホース類の取り外し。

順番が前後してしまいましたが、ホース類を取り外します。

固着して外れにくいホースは、内張り外しで私は外しています。

内張り外しはニップルを傷付けにくいように先端と内側の角を丸めています。

ホースはどうせ交換なのでどうでも良いのですが、

ニップルには傷を付けたくありません。

トップキャップ取り外し。

ビスを緩めて外します。

外れたトップキャップとスライドバルブ。

ニードルまでまとめて抜き取れます。

スライドバルブの取り外し。

スプリングと押さえ(黄色の部品)をまとめて圧縮しておいて、

ワイヤー先端のタイコを外します。

スライドバルブ取り外し完了。

ニードルの取り外し。

ニードルの押さえを固定しているビス2本を外します。

2番のプラスドライバーで外しますが、ドライバーのシャフト径が太いと

バルブ内側と干渉します。作業できなくはないですが、こだわる方は

シャフト径の細いドライバーを使って下さい。

取り外したニードル。

ニードルのEリングはテーブルなどに押しつけると簡単に外せます。

スロットルケーブルの取り外し。

調整部を緩めて分解します。

ケーブルの取り外し完了。

調整部を分解すればケーブルは引き抜くことが出来ます。

フロートチャンバーの取り外し。

ここからはキャブの下側を分解していきます。

フロートチャンバー取り外し完了。

内部の状態。

真鍮製パーツは腐食が進んでいます。

ジェット類は内径がわずかに大きくなってしまってもダメなので交換します。

もう片側のキャブの内部の状態。

こちらの方が酷いです。まあ、どのみちジェット類は交換なので関係ないですが。

Wikipediaの受け売りですが、ガソリンは長期放置すると酸が生成されて金属を侵すそうです。

真鍮は侵されやすいようですが、本体のアルミは強いんですね。

フロートの取り外し。

ピンを抜いてフロートを取り外します。ピンポンチで打ち抜いても良いのですが、

ピンの頭と本体間に隙間があればそこにマイナスドライバーなどを入れてこじって

外した方が失敗が少ないと思います。

ピンポンチで打ち抜くときに失敗して本体を破損させてしまうとオシャカです。

逆に組立て時は、ピンの頭と本体間にわずかに隙間をあけておくと次の分解が楽です。

あまり隙間をあけすぎるとフロートチャンバーが干渉するのでほどほどに。

フロート取り外し完了。

フロートバルブ(ニードルバルブ)も外れます。

フロートバルブ先端は段付きになっていました。交換です。

スロージェットの取り外し。

まずは樹脂製のパイプを引き抜きます。

R1-Zのキャブにも付いていますが、機能が今ひとつ分からない部品です。

外して乗って比較してみようかなあ。

マイナスドライバーでスロージェットを緩めます。

なめたりすると恐ろしく厄介なことになるので、ドライパー先端が

ジェットの溝に確実に入っているのを確認しながら慎重に緩めます。

取り外したスロージェット。

メインジェットの取り外し。

6mmのソケットで緩めます。

ワッシャーも外します。

破損していたワッシャー。

これはもう片側のキャブですが、ワッシャーが砕けていました。

ニードルジェットの取り外し。

一度外したメインジェットだけを再びねじ込んでおいて、押し込むとニードルジェットが外れます。

キャブが正常で綺麗なら手で押せば外れるのですが、固着していて外れないので

プラハンで軽叩きます(どうせメインジェットは交換なので叩いてしまいます)。

取り外したニードルジェット。

ヒドいな、こりゃ。

スロットルスクリューの取り外し。

アイドリング回転数(=全閉時のバルブ開度)を決めるスロットルスクリューを外します。

1KTキャブでは手で調整できるようになっているんですね。

R1-Zキャブではプラスのネジ溝です。

よくパイロットスクリューと間違われるようです。

私もR1-Zのキャブを初めてばらした時は勘違いしていて、戻し数を記録したりしていました(汗)。

スロットルスクリュー取り外し完了。

内部にはスプリング、ワッシャー、Oリングが入っています。

Oリングは本体に残ることが多いのでピックアップツールなどで取り出します。

フロートバルブのバルブシート取り外し。

ビスを緩めて押さえを外します。

バルブシートの取り外し。

ラジオペンチなどで慎重につかんで引き抜きます。

これはもう片側のキャブ。

ビスの腐食が激しく、ドライパー先端が入りません。

本体を壊してしまう恐れがあり、インパクトドライパーなどでガンガン叩くわけにはいかないので、

バイスグリップで掴んで緩めます。

無事に緩んでくれました。ホッ。

クリアランスが狭かったのですが、ギリギリ回せました。

取り外したバルブシート。

Oリングはカチカチで割れてしまいました。

シートとまとめて交換です。

エアジェットの取り外し。

スロージェットと同様にマイナスドライバーで慎重に緩めます。

取り外したエアジェット。

部品の取り外しが完了した本体。

他にも圧入された部品などがありますが、基本的にはこれ以上の分解は不要です。

写真のビス6本を外せば本体を分割して内部を直接洗浄できますが、

外すと単体部品設定の無いペーパーガスケットを交換しなければなりません。

外さなくてもしっかり洗浄すれば問題ありません。

矢印部にはトルクスネジが使われていて、外すな、外す必要なし、とメーカーの意思が示されています。

フロートチャンバーのドレンスクリューの取り外し。

両側のキャブともスクリューのネジ溝をなめてしまっていて、プラスドライバーが全く掛かりません。

送られてきた時にフロートチャンバーが外してあったのはどうもこのせいで、

ドレンが外れないのでチャンバーを外してガソリンを排出したようです。

まあ、内部の腐りっぷりからしてドレンを外しても意味が無かったかもしれませんが。

無事に外れたドレンスクリュー。

プラスドライバーは掛かりませんでしたが、マイナスドライバーは掛かって緩めることができました。

プラス、マイナス両方の溝が切ってあって助かりました。

分解完了したキャブ(クリックで拡大)。

ほとんどのインナーパーツを新品に交換します。

以前R1-Zのキャブをオーバーホールした時と同様に、

キースター製キットの部品に交換することにします。

次は洗浄作業です。