スロットルボディ清掃・プラグ交換(後編)
2023/7

 前編 からの続き。点検、組み立て、車体への復元です。絶好の機会なのでプラグ交換も行いました。

 インジェクターのフィルター点検。インジェクターのガソリン導入部には金属メッシュのフィルターがあります。ライトで照らして大きなゴミなどが引っかかっていないか点検しておきます。異常なし。

 インジェクターの役割から考えると、ガソリンの噴射と停止が確実にできるか、噴射時は規定量を狙ったパターンで噴射できるかの点検をしたいところです。しかしこれらはインジェクター整備専門店以外では困難。停止だけ簡易的な方法で点検することにします。

 インシュレーター、Oリングの交換。Oリングはシリコンゴム製のようです。オレンジ色に着色されています。

 インジェクター先端。吹き返しで多少汚れているかもと想像していましたが、目視レベルではきれいです。汚れを付着させてしまいそうなのでうかつに触れるのは避けるのが賢明。  

 抵抗値測定。サービスマニュアル記載の標準値11.7~12.3オーム(20℃)に対して測定値は12.2~12.3オーム。上限値ギリギリですが範囲内です。4個とも問題なしと判断。

 実はこの写真の時、ハーネスブラケットの取り付けを忘れています。本来はデリバリーパイプと共締め固定します。

 気密テスト。ガソリンが漏れれば最悪は車両火災につながります。またインジェクターは通電時以外に漏れがあってもいけません。

 そこでデリバリーパイプを組付けた後、注射器で軽く加圧して漏れがないかチェックします。圧力計をつなぎ、加圧状態を保持できるかで点検するのがベストですが、こんな方法でも簡易的なチェックは出来ます。

 注射器のピストンを押してしばらく加圧後、手を離すとピストンは元の位置まで戻りました。漏れなしと判断。

 ハーネスブラケットの形状変更。バイパススクリュー調整時に障害になるので少し曲げを伸ばしてずらしてしまいます。また本来はここにハーネスを結束バンドで固定しますが、それではハーネスが邪魔なので今は固定しないでおきます。

 吸気圧センサーの点検。吸気圧センサーが正しく動作しないために、ECUが燃調をうまくにコントロール出来ないのではないか? そんな疑問のため今回の整備でもっともやりたかった点検作業です。

 まずは吸気圧センサー#1。電源として5Vを供給し出力電圧を測定します。

 センサー開放状態、つまり大気圧がかかった状態での電圧は3.8Vでした。標準値3.8~4.2Vなので下限値いっぱいも正常範囲。

 負圧がかかった場合のセンサー出力電圧の測定。注射器と負圧計を接続しました。注射器を引いて負圧をかけ出力電圧を観察します。以下は測定結果。

  吸気圧センサー#1 大気開放3.81V、-20kPa時2.96V、-40kPa時2.20V、-60kPa時1.42V
  吸気圧センサー#2 大気開放3.81V、-20kPa時2.96V、-40kPa時2.20V、-60kPa時1.43V

 値だけだと分かりづらいですが、サービスマニュアルを参照すると負圧がかかった場合の出力電圧は正常範囲でした。

 センサーの故障が判明してくれたらという淡い希望を持っていただけに複雑な気分。

 ちなみに負圧計は以前自作した4連バキュームゲージを流用。

 組み立てたスロットルボディAssy。諸々復元して出来上がり。

 今回の整備では以前行ったスロットルボディの分解経験が役立ちました。興味のある方は下記をどーぞ。

 徹底解剖 スロットルボディ

 プラグ交換。いつもなら手が入りづらく面倒な作業も、スロットルボディがなければ広くて簡単。解放感に浸りながら作業します。

 取り外したプラグ。いつもの焼け具合です。

 しかし燃調が濃い割には焼けているような?

 装着した新品プラグ。NGK CR9EIA-9、標準品。

 スロットルボディ装着前。この隙間に横からスロットルボディを滑り込ませます。ダブルクレードルのバイクでも同じように横から脱着なので、そんなに大変なの?と思われる方もおられるかもしれません。

 しかしファネルの装着なんかは知恵の輪状態、コネクターや燃料ホースの脱着も狭くて大変なのです。生産ラインではまったく嫌われそうな作業。

 スロットルボディの装着。無理は禁物。あっちこっち確認しつつ滑り込ませます。インマニなどゴム製部品にはシリコンスプレーを部分的に吹いて潤滑して助けを借ります。

 ファネルの固定バンド取り付け前。

 バンドはあらかじめスロットルボディに被せておく。横から滑り込ませたスロットルボディをインマニにはめ込む。フレーム兼エアクリーナボックス側からファネルを入れてスロットルボディにはめ込んだらバンドを持ち上げてファネルの突起合わせて固定。知恵の輪です。

 って、ZX-14Rをここまで整備する方以外にはどうでも良い情報か。

 車体脇のウレタン?パッド。しばらく前から劣化が気になっていました。ついでで両側交換します。

 新旧パッド。古いパッドは劣化していて曲げると折れてしまいます。交換してスッキリ。

 さて、今回の整備の効果はどうだったか?

 結論としては何も変わりませんでした。O2センサーの出力電圧、挙動に変化なし。排ガスの臭いの変化も感じられず。残念。

 吸気圧センサー異常なし、エアを吸っていた形跡なし、各部の汚れがそれほどではなかったことなどを考えると、変化がなくて当たり前か。

 しかし今回の整備でバイパススクリューにアクセスできるようにしました。調整してみて排ガスの変化を確認します。次いってみよう!