2020/11/23掲載
チェーンの寿命は、メンテナンスに大きく左右されます。
そこで、チェーンにはマメに給油するようにしています。
頻度は走行距離で500km毎位でしょうか。
そのかいあってか新車購入から8年、37,000kmを走行しましたが、今のところ固着や目立った伸びはありません。
しかし、こちらを書いたことで、チェーンの伸び量が気になってきました。
そこで測定をもとに判断してみます。
2020/11現在のZX-14Rのチェーン、スプロケットの状態。
チェーンの外側プレートに少し錆びは出ていますが、固着や著しい伸びはありません。
感覚的にはまだまだ使えそうです。
チェーンが伸びたら交換が必要、当たり前です。
Web上やバイク関係の本にいくらでも書かれています。
しかし、具体的にどれだけ伸びたら交換なのかは、ほとんど書かれていません。
走行距離にして1~2万キロ位で交換、と書かれていることが多いようです。
走行距離は目安にはなるかもしれませんが、伸びとは直接の関係はありません。
伸びはメンテナンス次第で大きく変わってきます。
それに、1~2万キロで交換って、ちょっと早すぎる気がします。
やはり、長さを測定し、基準と比較することで客観的に判断すべきでしょう。
では、伸びの基準はというと、サービスマニュアルにちゃんと記載されています。
2012年式のZX-14Rのサービスマニュアルでは次のように書かれています。
ドライブチェーン磨耗(20リンク長さ) 標準値317.5~318.2mm 使用限度319mm
今回測定の結果は、318.44mmでした。
標準値からは少し外れていますが、使用限度まではまだ余裕があります。
結論としては、まだ使えると判断しました。
以下は測定の様子などです。
ノギスを使ってピン間距離を測定、算出しました。
ローラーの外側同士の長さ測定。
最大測定長さ150mmのノギスで8リンクについて測定しました。
137.45mm。
ローラーの内側同士の長さ測定。
同じく8リンクを測定します。
117.30mm。
ピン間の距離は 外側と内側の平均になるので、(137.45 + 117.30) / 2 = 127.38mmになります。
これは8リンクの測定なので、20リンクに換算すると、318.44mmです。
標準値からは外れていましたが、使用限度まではまだ0.5mmほどありました。
部分的に伸び量が違うかもと思い、測定は3箇所で行いました。
その結果、0.05mmほど測定値にばらつきがありました。
上記値はそれらの最大値です。
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測定方法について
上の写真では測定方法が伝わりにくいので、詳しく解説してみます。
測定したいのは、ピンとピンの中心間距離です。
しかし、チェーンの構造からいって、定規などでその距離を精度良く測定するのは困難です。
そこで、ノギスでローラーの外側と内側の距離を測り、計算から求めます。
ローラーの外側同士の長さ測定。
実車で測ったのは8リンクですが、ここでは解説用に2リンクの測定としています。
白く目印をつけたピンの中心間距離を求めます。
ローラーの内側同士の長さ測定。
ピンの中心間距離は、外側と内側の平均値で求められます。
ピン中心間距離 = (外側長さ + 内側長さ ) / 2
この測定方法、他のページでも紹介した産業用大手チェーンメーカーである
椿本チエインのホームページに解説があります。
実はサービスマニュアルには、何の測定器を使って、どうやって測るかが書かれていません。
定規やメジャーでも測れますが、精度は今一つです。
測定器について
今回、測定には150mmのノギスを使いました。
チェーンピッチは15.875mm、ローラー径は10.2mmなので、これで測れるのは8リンクが限度です
(15.875mm × 8リンク + 10.2mm =137.2mm)。
サービスマニュアルの指示通りに20リンクの長さを測れれば、使用限度との比較も簡単です。
しかし、20リンクの長さは前述の通り300mm超です。
チェーンの構造からいって、ノギス以外で精度良く測るのは困難ですが、
測定長さが300mmを越える400mmや500mmのノギスは一般的ではないでしょう。
また、仮にそれら大型ノギスがあったとしても、先端部(ジョーと呼ぶ)が大きくなるため、
ローラー間に差し込めません。
手持ちの300mmのノギスで試してみたところ、先端部が大きく差し込めませんでした。
大小ノギス。
左が300mm、右が今回使用の150mmのノギスです。
300mmのノギスは先端部が大きく、ローラー間に挿入できないので測定ができません。
今回使用の150mmのノギスであっても、428サイズなどもっと小型チェーンでは
差し込めずに測定できないかもしれません。
真似される方はご注意を。
測定時のチェーンの状態について
サービスマニュアルではチェーンに10kgの重りをぶら下げ、張った状態での測定が指示されています。
ピンとブッシュの間のガタの影響を無くすためです。
しかし、10kgの重りは簡単に用意できません。
仮に用意してぶら下げたとしても、長さ測定はチェーンの上側で行うので、
ZX-14Rの場合はサイレンサーやチェーンカバー、ステッププレートがジャマになります。
そこで、要は張った状態で測定すればよいので、スプロケットとチェーンの間にプラスドライバーの軸を挟み、
チェーンを張った状態にして測定を行いました。
アクスルシャフトを締め付けるときのガタ取りと同じ方法です。
どこまで使えそうか?
新車時の長さは測っていませんが、20リンクの長さが標準値最小の317.5mmだったと仮定します。
(チェーンピッチ15.875mm(5/8インチ)×20リンク=317.5mm)
今回測定から求めた値は318.44mmなので、0.94mm伸びたことになります。
37000kmの走行で0.94mm伸びたということは、10000kmあたり0.25mm伸びた計算です。
今後も同じペースで伸びると仮定すると、磨耗限度の319mmに到達するのは、計算上はあと22,400km走行後、
総走行距離にして60,000km位になります。
実際は固着の発生やOリングの破損、スプロケットの磨耗も進行するのでそこまで使えないかもしれませんが、
50,000kmまでは使えそうです。
出来るだけ長持ちさせるべく、今まで通りマメなチェーン給油に励みます。
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バイクの消耗品で、チェーンほどイメージで交換時期を判断されている部品は他にないかもしれません。
タイヤは残溝深さやハンドリングの悪化、グリップの低下などで、
ブレーキパッドは残り厚さで、
エンジンオイルは一定距離または期間、フィーリングの悪化などで、それぞれ交換が判断されています。
しかしチェーンはというと、長さを測って交換を判断されることはあまりないようです。
費用と手間がかかること以外は、早めの交換にデメリットはありません。
しかし、あいまいな判断基準を元にあまりに早く交換してしまってはもったいない、とも思ったのでした。
ここではチェーンの「伸び」という表現を使いました。
厳密には構成部品が伸びることはなく、磨耗と表わすべきかもしれませんが、
一般的で分かりやすい表現なので、伸びと書いています。