ブレンボ製のRCSラジアルマスターシリンダーは、
操作時のフィーリングが良く、ブレーキスイッチも付属しているので良い製品です。
しかし、個体によっては、レシオを短い側に設定していると、
レバーを握った際にわずかなガタを感じます。
私が今まで購入したのは3台ですが、その内2台で同様のガタを感じています。
そこでここでは、ガタを感じる原因と、その対策を紹介してみます。
以前にも記事にしたことがあるのですが、今回は詳しく書いてみます。
対策については、誰にでも勧められる手法ではないので、ご注意を。
ブレンボRCSマスターシリンダーの仕組み。
分かりやすくするために、レバー位置調整機構は省略して描いています。
レシオ切替軸を回転させることにより、レバーからの力が作用する位置が変わります。
レシオ切替軸には窪みがあり、スプリングを介した鋼球がはまり込むことで
回転位置決めになっています。
問題の解説。
レシオが長い側、20mm設定の時は、問題は起きません。
しかし、短い側の18mm設定時が問題です。
レバーを握ると、ロッドを介してピストンに力が伝達されます。
この時、元々は穴とのガタ分外側に寄っていたレシオ切替軸が内側にずれてしまうのです。
握るたびにガタを感じ、わずかに「カクッ」した感触があるのはこのためです。
この問題、切替軸とレバーの穴のクリアランスで
発生するかしないかが決まります。
今まで購入したRCSマスターは3台、そのうち2台はこの問題が起きましたが、
1台は問題ありませんでした。
どうやらバラツキが結構あるようです。
細かい問題なので、気にならない方は全く気にならないかもしれません。
しかし、私は気になって仕方ないので直すことにします。
製作した分解用治具(ジグ)。
分解には、レバーのカラーを打ち抜く必要があります。
そこで電ドルとグラインダーで治具を製作しました。
旋盤がなくても何とかなるもんです。
カラーの打ち抜き。
軽めの圧入なので、強く叩く必要はないはずです。
分解したレバー根元部分。
2個の小さなスプリングの紛失に注意。
レシオ切替軸の取り外し。
押し出して取り外しますが、回転位置決めの鋼球、スプリングの紛失に注意が必要です。
手直しの方法ですが、矢印の部分をボールハンマーで叩きます。
叩いてレシオ切替軸の穴を楕円状に変形させ、作動時のガタが小さくなるように調整します。
ちょっと強引ですが、比較的簡単に実施可能な方法が他にありません。
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修正完了。
叩くと、レシオ切替軸の座面も変形します。
ヤスリをかけて平面を出しておきます。
反対側の面の研磨。
個体差でしょうか?、私が購入したこのマスターシリンダー、
レシオ切替軸の出っ張りが小さく、マイナスドライバーのかかりが浅かったのです。
ドライバーのかかりが浅いままでは、なめてしまう恐れがあります。
面を少し削って対処しておきます。
復元完了。
摺動部にはグリスを塗って組み立てています。
車体に復元して動作させると、目論見通りガタは無くなりました。
ブレンボさん、ここのクリアランス管理きちんとして下さいよ。
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レシオ切替時の注意。
切替軸を回転させて行うわけですが、回転させられるのは一方向だけです。
というのは、レシオ切替軸を干渉させないための逃げが片一方にしかないためです。
切替時、干渉しているのに気付かず強引に回してしまい、
切替軸のマイナス溝を傷めてしまう人もいるかも。
分かりにくくていけませんな。